スタートアップのカスタマーサクセス戦略|持続的な成長を実現するために
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はじめに
スタートアップ企業は、安定した収益を確保することが大きな課題です。
安定した収益を確保するには、新規顧客を開拓していくのも大事ですが、既存顧客に支持され、リピートされることも大切です。
どんなに製品やサービスが素晴らしいものであっても、顧客からリピートされなければ、企業として成長できません。
そのため、顧客と長期的な関係を維持するため、カスタマーサクセスに取り組む必要があります。
カスタマーサクセスとは、顧客が製品やサービスから最大限の価値を引き出せるよう全面的にサポートする活動のことです。
スタートアップは人員やリソースに制約があるのが実情です。そのため、効率的かつ効果的にカスタマーサクセスを実践することで、持続的な成長が可能になります。
本記事では、スタートアップのカスタマーサクセス戦略を解説します。
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カスタマーサクセスとは?
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カスタマーサクセスとは、顧客が製品やサービスから最大限の価値を引き出せるようにサポートする活動を指します。カスタマーサクセスを通じて、顧客満足度を向上させ、ロイヤリティを構築することが可能になります。
カスタマーサクセスの主な業務には、新規顧客が製品を活用する際の支援、製品を有効活用するための継続的な教育、顧客とのコミュニケーション促進、改善への意見収集などがあります。具体的には、以下のようなサポートが求められます。
- オンボーディングでの初期設定ガイドやトレーニング
- 製品活用を深めるウェビナーの実施
- メールやチャットによる積極的な顧客コミュニケーション
- NPS調査などを通じた改善点の洗い出し
限られたリソースの中でこれらの取り組みを効果的に実践し、一人ひとりの顧客に合わせたきめ細かなサポートを提供することが必要です。
カスタマーサクセス戦略の構築
続いて、カスタマーサクセス戦略を構築するステップを解説していきます。
顧客ペルソナ/カスタマージャーニーマップの作成
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効果的なカスタマーサクセス戦略を構築するためには、顧客の課題や目標を理解する必要があります。その際に、顧客ペルソナカスタマージャーニーマッピングを作成することが有効です。
①顧客ペルソナの作成
顧客ペルソナとは、典型的な顧客の特性や行動パターンを描いた仮想的な人物像です。年齢、職業、ライフスタイル、興味関心などさまざまな属性を設定し、製品やサービスに対するニーズやペインポイントを発見しましょう。
実在する複数の顧客データから抽出したペルソナを作ることで、顧客を深く理解し、きめ細かい施策を立案することが可能になります。
②カスタマージャーニーマップの作成
カスタマージャーニーマップとは、顧客が製品やサービスとどのようにタッチポイントを持ち、関わりを深めていくかを視覚的に表したものです。以下のような一連のプロセスをマッピングします。
- 製品を認知する段階
- 製品への興味を持った段階
- 比較検討を経て購入に至る段階
- 実際に利用を開始する段階
- リピーターになる段階
このようにマッピングをし、顧客との接点を整理することで、CXを向上させるための改善策を見つけ出すことができるのです。
顧客オンボーディングプロセスの設計
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顧客オンボーディングプロセスの設計も重要な戦略要素になります。顧客が製品やサービスを速やかに理解し、効果的に活用できるようになるためのプロセスです。
具体的には、ステップバイステップのガイドやビデオチュートリアル、FAQなどのリソースなどを検討しましょう。このような施策があると、初心者でもサービスをスムーズに導入することが可能になります。
また、導入後にも顧客が直面する可能性のある課題を予測し、プロアクティブにサポートを提供することも大切です。
改善サイクルの確立
続いて、顧客の声を収集し、それに基づいて製品やサービスを改善するサイクルを確立させましょう。NPS(ネットプロモータースコア)調査や顧客満足度調査を定期的に実施します。
また、顧客からの改善の要望やフィードバックも収集、分析しましょう。そして、それらをプロダクトチームとも共有し、新機能の追加や既存機能の改修、カスタマーエクスペリエンスの向上などを図っていきます。
このようなサイクルを回すことで、顧客ニーズに寄り添った製品を継続的に提供し、顧客満足度を維持、向上させることができるのです。
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部門を連携させたサポート
また、カスタマーサクセス戦略の実行には、マーケティング、セールス、製品開発、サポートといった、各部門が連携した取り組みが不可欠です。
具体的には、マーケティング部門はキャンペーンを展開し、セールス部門は顧客ニーズに応じた提案をします。製品開発部門は顧客の改善要望を製品に反映させ、サポート部門は的確な支援を提供します。
このように、各部門が連携することで、顧客の全ライフサイクルを通じた一貫したカスタマーサクセスを実現できるのです。
このように、顧客理解、オンボーディングの強化、継続的な改善サイクル、部門連携による総合的なサポートなど、さまざまな側面から戦略を練る必要があります。これらを組み合わせることで、顧客ロイヤリティの向上と長期的な収益獲得を実現し、スタートアップの持続的な成長を後押しすることができるはずです。
カスタマーサクセスの効果的な実践
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カスタマーサクセスを実際に実践する上で、最も重要なのはコミュニケーションです。顧客のニーズに合わせたきめ細かいコミュニケーションを行うことで、顧客との信頼関係を構築することができるのです。
効果的なコミュニケーションチャンネルの利用
コミュニケーションチャネルを効果的に活用することが大切です。メールやチャット、動画などのチャネルを使い分けましょう。タイミングやコンテンツを顧客に合わせてパーソナライズすることが求められます。
例えば、メールではタイムリーな情報を顧客の関心事に合わせて届けるキャンペーンを展開します。また、チャットやWeb会議を使えば、リアルタイムでのサポートも可能になります。このようにマルチチャネルを組み合わせ、最適なタイミングとコンテンツで顧客にリーチすることが大切なのです。
VoCの活用
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VoC(顧客の声)を収集し、製品やサービスの改善につなげることも、カスタマーサクセスを効果的に実践するうえで不可欠です。
また、定期的に、NPS(ネットプロモータースコア)調査や顧客満足度調査を行い、課題を早期に発見し、解決に努めましょう。顧客からのネガティブなフィードバックには迅速に対応し、その声を製品改善に生かしていくプロセスを確立することが重要です。
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顧客ロイヤルティを向上させる
さらに、ポイントプログラムや会員制度を導入することや、オンラインコミュニティを形成するなど、顧客ロイヤリティを高める施策も有効でしょう。
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ポイントプログラムや会員制度の導入
ポイントプログラムや会員制度を導入し、長期的な製品利用を後押ししてみましょう。ポイントを貯めると割引や特典が受けられるようにするなど、インセンティブを設けることで、顧客が継続的に利用することが可能になります。
さらに、会員限定のイベントやセミナーを開催し、顧客との直接的な交流の機会を設けることも、ロイヤリティ構築に役立ちます。
オンラインコミュニティの形成
オンラインコミュニティを形成することも効果的な取り組みです。Webフォーラムやユーザーグループを立ち上げ、顧客同士が情報交換やサポートし合える場を提供します。
製品の活用ノウハウを共有したり、質問に答え合ったりすることで、コミュニティ内でナレッジが蓄積され、顧客同士のつながりも深まります。さらに、コミュニティ内で企業側からのサポートや情報発信も行うことで、顧客とのエンゲージメントを高めることもできるのです。
このように、戦略的なコミュニケーションとさまざまな施策を組み合わせることで、顧客満足度やロイヤリティを向上させることができます。これらの取り組みを通じて、顧客との絆を強化し、長期的な収益確保を実現させましょう。限られたリソースの中で、効果的にカスタマーサクセスを実践することが大切なのです。
スタートアップにおけるカスタマーサクセスの事例
多くの優れたスタートアップは、創業当初からお客様中心のカスタマーサクセス戦略を推進してきました。
① Slack
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ビジネスチャットツールのSlackは、お客様からの改善要望を素早く製品に反映させ、使いやすさと機能性の向上に努めてきました。加えて、ユーザーコミュニティの活動を後押しし、高いエンゲージメントを実現しています。
② HubSpot
マーケティングプラットフォームのHubSpotは、アカデミーを開講して顧客教育に注力しています。一方、フォーラムなどでユーザー同士がサポートし合える場も提供しています。このようにして、ロイヤリティの構築を図っているのです。
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参照:HubSpot Community - イベント&セミナー - HubSpot Community
③ Dropbox
クラウドストレージのDropboxは、分かりやすいUIとファイル共有の利便性を追求し、新規顧客のスムーズな製品導入を実現しています。また、ヘルプセンターやチュートリアル動画を用意するなど、オンボーディング体制を整備しているのです。
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参照:Dropbox ヘルプセンター - Dropbox の使い方 - Dropbox ヘルプ
これらのスタートアップはUIの改善やコミュニティ活動の支援、オンボーディングの強化、顧客教育の充実化など、様々な施策を打ち出し、お客様の満足度とロイヤリティの向上に取り組んできました。創業当初から顧客志向のカスタマーサクセス戦略に注力し、持続的な成長を実現しているのです。
まとめ
スタートアップにとって、カスタマーサクセス戦略は事業の行方を左右する重要な要素になります。人員やリソースに制約がある中で、いかに顧客満足度を高め、ロイヤリティを構築できるかが問われているのです。
顧客志向を徹底し、顧客との確かな信頼関係を築くことが、スタートアップの持続的成長に繋がるはずです。人員が限られる中では工夫を重ね、効率的なカスタマーサクセスの実現を目指しましょう。
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今関 栞
航空会社でキャリアをスタート。これまで約7年、スタートアップ/ベンチャー企業にて、主にCS、及び業務プロセス改善に従事。 CS部門の立ち上げ/運用/改善、チャーンレートの改善やチャーン阻止など実務〜マネジメントを経験。 また、SQLを用いたデータ取得/分析/提案、CRM構築などテクニカルな分野も得意領域。 これまでの担当企業数は数百社にわたる。