カスタマーサクセスで重要な12の指標|具体的な計算方法や見方を解説
はじめに
カスタマーサクセス(Customer Success)は、サブスクリプションモデルの普及やB2Bビジネスの複雑化に伴って、現代のビジネスで欠かせない要素です。
カスタマーサクセスの役割は、顧客が製品やサービスの価値を最大限に引き出せるようサポートし、顧客との長期的な関係を構築することです。
カスタマーサクセスを実施するうえで、現状を正確に把握し、継続的に改善していくことが大切になります。
そこで重要になるのが、適切なKPI(重要業績評価指標)の設定です。
この記事では、カスタマーサクセスにおける主要なKPIを解説していきます。
指標を理解し、適切に活用することで、より効果的なカスタマーサクセスを実施できるはずです。
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カスタマーサクセスとは、サブスクリプション型ビジネスを中心に注目が高まっている顧客志向の考え方です。新規顧客の獲得だけでなく、既存顧客の継続的な利用拡大に重点を置いています。カスタマーサクセスの目的や重要性、導入時のポイントなどを解説しつつ、10個の「勝ちパターン」を紹介しています。
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カスタマーサクセスとは
カスタマーサクセスとは、顧客が自社の製品やサービスを効果的に活用し、ビジネス上の目標を達成できるようにサポートする取り組みを指します。
単にサポートするだけでなく、顧客の目標達成を支援するために、積極的に働きかけるのがカスタマーサクセスです。
カスタマーサクセスを適切に実行すると、顧客満足度の向上や長期的な契約の維持、さらにアップセルやクロスセルの機会を増やすことが可能になります。
結果として、カスタマーサクセスを実行することで企業の収益を増加させることができます。
カスタマーサポートとの違い
カスタマーサポートは、顧客が抱える問題や質問に対して、受動的に対応する役割です。
具体的には、顧客からの問い合わせに対応するのがカスタマーサクセスの役割になります。
一方で、カスタマーサクセスは、顧客のニーズを把握し、問題が発生する前に、能動的にサポートを提供します。
つまり、カスタマーサポートは問題が生じた際に解決を図り、カスタマーサクセスは顧客を長期的にサポートするアプローチです。
KPIを設定する意義
カスタマーサクセスの成果を正しく評価するためには、KPI(重要業績評価指標)を設定することが必要です。
KPIを設定することで、顧客との関係性を可視化したり、顧客が製品やサービスから引き出している価値を定量的に測定できます。
KPIを設定すると、カスタマーサクセスの取り組みが効果的に機能しているかどうかを判断し、必要に応じて改善策を講じる体制を作れるのです。
カスタマーサクセスにおける12の指標(KPI)
(1)LTV(顧客生涯価値)
【定義】 顧客が生涯にわたり企業にもたらす収益の総額
【計算方法】
LTV = 平均購入金額 × 平均購入回数 × 平均継続年数
または
LTV = (顧客あたりの平均月間収益) × (平均継続年数(月数))
(例) ある顧客が月額10,000円のサービスを2年間利用した場合、LTVは 240,000円 です。
LTVが高いほど、顧客と長期的な関係を築いていると言えます。
「顧客と長期的な関係性を築く」というカスタマーサクセスの役割を達成できているかを図る指標になります。
(2)顧客維持率
【定義】チャーンレートの逆数で、どれだけの顧客が契約を継続しているかを示す指標
【計算方法】
顧客維持率 = 1 – チャーンレート
または
顧客維持率 = (期間終了時点の顧客数 – 期間中に新規獲得した顧客数) / (期間開始時点の顧客数) × 100
(例) 1月のチャーンレートが5%の場合、顧客維持率は 1 – 0.05 = 0.95、つまり95%です。
高い顧客維持率は、顧客のロイヤリティが高く、安定した将来の収益が見込めることを示しています。
低い場合は、解約を防ぐための対策の必要性があります。
(3)チャーンレート(解約率)
【定義】一定期間内に解約した顧客の割合
【計算方法】
チャーンレート = (一定期間内に解約した顧客数) / (期間開始時点の顧客数) × 100
(例)1月に顧客が1000人いて、そのうち50人が解約した場合、チャーンレートは (50 / 1000) × 100 = 5% になります。
チャーンレートが高い場合、顧客が製品やサービスに満足していない事や、価格設定に問題があることが考えられます。
そのため、チャーンレートを抑えるために対策することが必要になります。
一方で、低いチャーンレートは、顧客満足度が高く、安定した収益基盤が築かれていることを示します。
(4)アップセル・クロスセル率
【定義】アップセル率は、既存顧客がより高価格のプランに移行した割合
クロスセル率は関連商品を追加購入した割合
【計算方法】
アップセル率 = (アップセルした顧客数) / (対象顧客数) × 100
クロスセル率 = (クロスセルした顧客数) / (対象顧客数) × 100
(例) 1000人の顧客に上位プランを提案し、50人が移行した場合、アップセル率は 5% です。
アップセル・クロスセル率が高いほど、顧客が既存の製品やサービスに満足し、さらなる価値を求めていることを示します。また、顧客との関係が良好であり、顧客生涯価値(LTV)が向上していることを示します。
(5)オンボーディング完了率
【定義】新規顧客のうち、オンボーディングプログラムを完了した顧客の割合
【計算方法】
オンボーディング完了率 = (オンボーディングを完了した顧客数) / (オンボーディングを開始した顧客数) × 100
(例) 100人の新規顧客のうち80人がオンボーディングを完了した場合、オンボーディング完了率は (80 / 100) × 100 = 80% です。
オンボーディングはカスタマーサクセスが担う役割です。複雑なSaaSの製品は、オンボーディングを実施しないと顧客に定着しません。
オンボーディング完了率が低く、顧客維持率が低い場合は、オンボーディングプロセスを改善する必要があります。
(6)NPS(ネットプロモータースコア)
【定義】 顧客が製品やサービスを他人に推奨する可能性を示す指標
【計算方法】
「0〜10点で、友人や同僚にこの製品を薦める可能性はどのくらいですか?」という質問に基づき、回答者を以下に分類します。 プロモーター (9-10点)、パッシブ (7-8点)、デトラクター (0-6点)
NPS = プロモーターの割合 – デトラクターの割合
(例)100人の顧客のうち60人がプロモーター、20人がデトラクターの場合、NPSは40です。
NPSが高いほど、顧客ロイヤリティが高く、口コミによる新規顧客獲得やブランドイメージの向上が期待できます。
(7)CAC(顧客獲得単価)
【定義】 新規顧客1人を獲得するためにかかった費用
【計算方法】
CAC = (一定期間のマーケティング費用 + 営業費用) / 同期間に獲得した新規顧客数
(例) マーケティング費用100万円、営業費用50万円、50人の新規顧客を獲得した場合、CACは3万円です。
CACは顧客獲得の効率を評価する重要な指標です。
営業活動の効率化や顧客維持率の向上が有効です。
(8)NRR(売上継続率)
【定義】 既存顧客からの収益がどれだけ維持・拡大されているかを示す指標。
【計算方法】
NRR = (期末の既存顧客収益 + アップセル・クロスセル収益 – チャーンによる収益減少) / 期首の既存顧客収益 × 100
(例)期首に100万円の収益があり、期末に90万円、アップセルで20万円の増収、チャーンで10万円の減収があった場合、NRRは100%です。
NRRが100%を超える場合、既存顧客からの収益が拡大しており、ビジネスが成長していることを示します。
一方で、100%未満なら、チャーンの影響が大きいことを示しています。
(9)セッション時間
【定義】 顧客が1回の訪問で製品やサービスを利用している時間
【計算方法】
利用開始から終了までの時間を計測し、平均を算出します。
(例)1000人のユーザーの平均セッション時間が5分の場合、ユーザーは平均して1回のアクセスにつき5分間サービスを利用していることになります。
セッション時間が長い場合、ユーザーがサービスを多く利用していることを示します。ただし、製品やサービスの性質によっては、短いセッション時間でも、顧客が多く製品を利用していることを示す場合があります。
セッション時間は、他の指標(セッション頻度、特定機能の使用率など)と組み合わせて解釈することも大切です。
また、セッション時間の変化を追跡することで、製品改善やユーザー行動の変化を把握できます。
(10)アクティブユーザー数
【定義】一定期間内に製品やサービスを実際に利用した顧客の数
【計算方法】
特定の期間(1日、1週間、1か月など)と具体的な利用基準(ログイン、特定の機能の使用など)を設定し、その条件を満たすユーザー数を集計します。
(例)過去30日間にログインしたユーザーが10,000人の場合、月間アクティブユーザー数(MAU)は10,000人となります。
アクティブユーザー数の増加は、製品やサービスの価値が顧客に認められ、継続的に利用されていることを意味しています。
この数値を定期的に追跡することで、顧客の利用状況や製品の普及度を把握し、必要に応じて改善策を講じることができます。
(11)CSQL(カスタマーサクセスクオリファイドリード)
【定義】 カスタマーサクセスチームが将来のアップセル・クロスセルの見込みがあると判断した顧客
【計算方法】
製品利用状況や顧客満足度に基づき独自基準を設定して計測します。
具体的には、以下のような要素を考慮して評価します。
・製品の利用状況
・顧客満足度
・エンゲージメントレベル
CSQLを特定することで、営業活動の効率化が図り、収益拡大につながる可能性が高まります。
(12)ヘルススコア
【定義】 顧客の成功状態を総合的に評価するスコア
【計算方法】製品利用状況やサポート履歴、顧客フィードバックなどを元にスコア化します。
以下のような要素を組み合わせてスコア化します。
・製品利用状況
・サポート履歴
・顧客フィードバック
・契約更新履歴
・エンゲージメント指標
ヘルススコアを継続的に監視することで、リスクのある顧客を早期に発見し、適切なタイミングでサポートを提供できます。
これにより、顧客満足度が向上し、結果としてチャーン(解約)リスクを低減させることが可能です。
KPIを活用するポイント
適切なKPIの選定
各企業の業界特性やビジネスモデルに応じて、最適なKPIを選択することが大切です。
全ての指標を追跡するのではなく、自社の目標達成に直結する指標に焦点を当てましょう。
例えば、サブスクリプションモデルの企業であれば、チャーンレートや顧客生涯価値(LTV)などに重点を置くことが効果的です。
定期的な見直しと更新
市場環境や顧客ニーズは常に変化しています。
そのため、設定したKPIを追うことが本当に必要であるかを定期的に評価し、必要に応じて更新することが成功への鍵となります。
例えば、新機能の追加や顧客層の変化に応じて、オンボーディング完了率や特定機能の利用率など、新たな指標を導入することも検討すべきです。
まとめ
カスタマーサクセスにおいて、適切なKPIを設定することで顧客の成功を測定し、それに応じた対策を講じることができます。
KPIを設定し、継続的にモニタリングすることで、カスタマーサクセス戦略の効果を最大限に引き出し、顧客との長期的な関係構築を実現できるはずです。
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