ユーザーヒアリングで、仮説を裏付けるだけのボリュームはどれくらい?統計学的な根拠を知りたい
新規事業を作られている方と話すと、このような質問をいただくことがあります。
- ユーザーヒアリングでどれくらいの数をやったらいいの?
- 統計的に妥当な数字ってあるの?
本記事では「ユーザーヒアリングに必要な数」についてまとめます。
結論
結論から言うと、同じような属性の人に最低3人以上、最大5人ということになります。
もちろん、インタビューの目的によっても異なるし、どれほど質を担保したいかによるでしょう。
とはいえ、目安がないと判断しにくい。過去の経験も踏まえるとこれぐらいが妥当です。
3~5人とする理由
一般的に、このようなインタビュー数が話題になるときに、根拠とされるのが、以下の論文です。
Nielsen, Jakob, and Landauer, Thomas K.: “A mathematical model of the finding of usability problems,” Proceedings of ACM INTERCHI ’93 Conference (Amsterdam, The Netherlands, 24-29 April 1993), pp. 206-213.
論文はこちら
この調査では、様々なシステムの使い勝手を評価するユーザビリティテストの統計的妥当性について調査を行いました。つまり、どれくらいの人数に確認すると、どれくらいそのシステムの問題点が分かるのか、ということを研究したのでした。
対象となったシステムは以下です。CUIというのは、ブラウザで閲覧できる今どきのUIではなく、ハッカーが使うような黒い画面に白い文字がでているもの。1993年の調査なので、かなりレガシーな調査ですね。
そういったシステムの古さはあるとはいえ、この調査で分かったのは5人ぐらいに聞くと、得られる発見が減るという結果でした。以下のグラフのとおり、3人聞くと70%ぐらい問題は発見でき、5人目になると目新しい情報は減っていきます。
以下の記事では、このような風に書かれています。
ユーザーの数が増えるにしたがって、学べることは減少していく。なぜなら、同じ現象を繰り返し見ることになるからだ。同じことを何度も見続ける必要は、本当のところない。もうあなたは、製図台に向かって、ユーザビリティ問題を解決するためにサイトの再デザインをやろうという気持ちになっていることだろう。
ユーザーの数が5人目を超えると、もはや時間の無駄だ。同じことを何度も繰り返し観察しているだけで、新たに得るところなどほとんどない。
5人のユーザーでテストすれば十分な理由
そのため、似たような人にインタビューするのであれば、最低3人、多くても5人に聞けば良いと回答したわけです。
5人以上に聞くと良いケース
確かに似たような5人に聞けば目新しい情報は減ってくるでしょう。とはいえ、そうではないケースもある。
たとえば、以下のようなケース。
- そもそもペルソナが複数いる(年齢や行動、購入理由が同じではない場合)
- 定性より定量の視点で、説得力を持たせたい
1つ目はそもそも、ペルソナが複数いる場合。特にC向け(消費者向け)サービスに多いケースです。
たとえば、英語学習サービスといっても、留学のため、仕事のため、年収アップのため、交流のためと、様々なケースが考えられます。このときは同じペルソナで3~5人という風に考えたほうがよいでしょう。
2つ目は定量という考えを重視する場合です。前提として、ユーザーヒアリングは定性調査であり、量ではなく質を重視するものです。質を重視するからこそ、狭く広く聞けることに価値があるわけです。
一方で、3人ぐらいだと経営陣からそれって妥当な数字なのと突っ込まれるかもしれない。その場合は量を求められているので、増やしたほうが良いでしょう。
この場合はユーザー数や予算感にもよるが、30-50人ぐらいあると良いでしょう。ある程度聞いてみて、正解はなく、これ以上あまり新しい情報が出ないとなるまで続けるしかない。
終わりに
本記事では、ユーザーヒアリングの妥当な人数についてまとめてみました。同じペルソナであれば、統計上は最大5人というのは結論です。
もしユーザーヒアリングで量に悩むことがあればぜひ参考にしていただけたら嬉しいです。