NRRとは何か?ビジネス成長に欠かせない指標を徹底解説
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はじめに
「NRRってよく耳にするけど、具体的にどうやって計算するの?」
「NRRをどう活用すれば、ビジネス成長に役立つのか分からない…」と悩んでいませんか?
指標を使って現状を分析することはとても大切ですが、指標の意味を正しく理解しないまま導入しても思うような成果は得られません。
そこで本記事では、NRR(Net Revenue Retention:ネット・レベニュー・リテンション)の意味や具体的な計算方法、さらにビジネスでどのように活用すれば効果が出るのかを詳しく解説します。
最後まで読むことで、NRRを理解できるだけでなく、今後のアクションプランを立てるためのヒントを得られるはずです。
初心者の方でもわかりやすいように解説していますので、ぜひ参考にしてください。
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NRRとは何か?
NRRは「Net Revenue Retention」の略で、主にSaaS(ソフトウェア・アズ・ア・サービス)などのサブスクリプション型ビジネスで重視される指標です。
NRRは既存顧客から得られる収益が、一定期間(多くの場合は1年)でどの程度増減したかの「売上維持率」を示す指標です。
新規顧客の売上を含めずに、既存顧客のみの動きを把握できるのが特徴です。
例えば、単純に売上全体の伸び率だけを見ても、新規顧客の契約が増えたことによる影響と既存顧客からのリピートやアップセルの影響を分けて判断しにくい場合があります。
そこを補うのがNRRの役割です。
NRRを定期的にチェックすることで、顧客維持とアップセル・クロスセル戦略の成功度合いを可視化し、長期的な収益基盤の安定性を測ることができます。
NRRと類似指標の違い
NRRと似た概念には、以下のような指標が挙げられます。
- GRR(Gross Revenue Retention)
解約を含めた既存顧客の売上を純粋に比較する指標。アップセルやクロスセルによる収益増は考慮しないため、顧客の利用継続状況を把握するのに役立ちます。 - MRR(Monthly Recurring Revenue)
毎月の定期収益を示す指標。新規契約や解約、アップセル等、すべてを含めた総合的な月次売上の動きを把握できます。
NRRは、解約やダウングレードだけでなく、アップセル・クロスセルによる売上増も考慮する点が大きな特徴です。
つまり、既存顧客との関係性がどの程度拡大しているかをより正確に読み取れる指標といえます。
NRRを計算する方法
では、具体的にNRRをどうやって計算するのでしょうか。基本的な式は次の通りです。
NRR = (期初の既存顧客からの収益 + アップセル・クロスセルによる増加収益 − 解約やダウングレードによる減少収益) ÷ 期初の既存顧客からの収益 × 100(%)
ポイント1:期間の設定
多くの場合、1年間や1四半期などの一定期間を区切って、期初の既存顧客の収益をベースに比較します。短期的な変動に惑わされず、継続率やリテンション施策の効果を長期的に捉えることが大切です。
ポイント2:アップセル・クロスセルと解約
NRRには、新規顧客による売上増加は含まれません。アップセル・クロスセルによる増加分は加算し、既存顧客の解約やダウングレードによる売上減少分は差し引くため、いかに既存顧客から収益を安定的かつ継続的に得るかが数値に反映されます。
計算例
たとえば、以下のような想定で考えてみます。
- 期初の既存顧客からの月間収益:100万円
- アップセル・クロスセルによる増加:20万円
- 解約やダウングレードによる減少:10万円
この月のNRRは、
(100万円 + 20万円 - 10万円) ÷ 100万円 × 100=110%
となります。
これは、既存顧客ベースの収益が期初比で110%に増えた、ということです。
NRRが100%を超えるということは、「解約やダウングレードを上回る形で、アップセル・クロスセルによる収益増が得られている」状態を意味します。
NRRが重要視される理由
サブスクリプション型ビジネスの隆盛に伴い、NRRを重視する企業が増えています。
その背景として以下の3点が挙げられます。
1. 既存顧客との長期関係が利益を生む
一般的に、新規顧客を獲得するコスト(マーケティング費用や営業コスト)は、既存顧客に対するアップセル・クロスセルを行うコストよりも高いとされています。
統計データによると、「新規顧客獲得コストは既存顧客への販売促進コストの5倍かかる」という調査結果もあるほどです。
長期にわたって継続利用してくれる顧客が増えれば、それだけマーケティングコストを抑えながら、安定した売上が期待できます。
そこで、既存顧客の動きを把握するNRRが重視されます。
2. ビジネスモデルの安定度を把握できる
NRRが高いほど、事業基盤が安定していると言えます。
新規顧客からの売上に依存しすぎるビジネスは、外部環境の変化や競合の参入などで売上が急落するリスクがあります。
一方で、既存顧客との関係が強固であれば、そのリスクを軽減できます。
NRRを定期的に追跡することで、「自社のサービスや製品が本当にユーザーにとって不可欠な存在になっているか」を数値で確認できるのです。
3. 企業価値に直接影響する
SaaS企業やサブスクリプション型サービスの評価指標として、投資家や金融機関もNRRを重要視します。
投資家目線では、単なる売上の伸びよりも、解約率の低さや継続率の高さなど、将来的な安定収益を期待できるかどうかが重視されます。
そのため、NRRの数値は企業価値に直接影響すると言っても過言ではありません。
NRRを向上させるための施策
では、具体的にNRRを高めるにはどのような施策が有効なのでしょうか。
本章では、具体的な施策を解説していきます。
1. 顧客オンボーディングの充実
顧客がサービスを使い始める最初の段階でつまずくと、そのまま解約につながるケースが少なくありません。
- 分かりやすいチュートリアル
- メールや動画での使い方ガイド
- 利用開始直後のサポート体制の強化
などを行い、顧客がスムーズにサービスの価値を感じられるようにすることで、早期解約を防ぎます。
2. カスタマーサクセスチームの強化
継続利用を促進するには、顧客がサービスを活用して成果を得られるよう伴走することが重要です。
- 専任のカスタマーサクセスマネージャーを配置する
- 定期的なオンラインミーティングやウェビナーを実施して活用事例を共有する
- 顧客ごとの課題を分析し、適切な提案を行う
このように顧客とのコミュニケーションを定期的に行うことで、解約リスクを下げ、アップセル・クロスセルのチャンスを高められます。
3. 製品改善と新機能の開発
サービスや製品に対する顧客の要望を積極的に取り入れ、定期的にアップデートを実施することで「使い続けるメリット」を感じてもらいやすくなります。
特に、競合他社がすでに提供している機能が自社にない場合は、それが解約理由になることがあります。
そのため、優先度を高めて改善に取り組みましょう。
4. ロイヤリティプログラムや特典の付与
長期利用してくれる既存顧客に対して、追加の特典を用意することも大切です。
- 上位プランへの自動アップグレード
- 専用サポートや限定セミナーの開催
- 費用面の優遇(割引)やポイント付与
こうした取り組みによって顧客満足度を高め、解約を抑えつつアップセルの機会を拡大できます。
NRR向上の事例
ここでは、実際にNRRを向上させた事例を簡単に紹介します。
事例1:BtoB向けSaaS企業A社
A社は中小企業向けの営業支援ツールを提供していました。
新規顧客獲得に注力していましたが、解約率が高く、売上が頭打ちになる状況が続いていました。
そこで、既存顧客が解約する理由を調査したところ、「ツールの導入後、活用方法が分からない」「導入後のフォロー体制が手薄」という声が多かったのです。
A社はカスタマーサクセスチームを増員し、定期的に活用状況をヒアリングして改善提案を行う施策をスタートしました。
その結果、NRRは90%から120%に向上し、安定した経営基盤の構築に成功しました。
事例2:個人向けサブスクリプションサービスB社
B社は動画配信プラットフォームを提供していました。
利用者は多いものの、他社サービスに乗り換えてしまうケースが目立ち、NRRも80%程度にとどまっていました。
課題として、利用者が配信されるコンテンツの多さに対してどれを視聴すれば良いか分からず、放置して解約するというパターンが浮上しました。
そこで、視聴履歴を活用したレコメンド機能を強化し、ユーザーが興味を持ちそうなコンテンツを最適に提示するようにしました。
さらに、限定配信の独自コンテンツを拡充した結果、利用者の定着率が上がり、NRRは100%を超えるまで改善できました。
NRRを高めるために必要な組織体制
NRRを継続的に高めるには、カスタマーサクセスだけでなく、社内のさまざまな部署が協力し合う組織体制が不可欠です。
- 製品開発チーム:顧客要望を正しく製品に反映する
- マーケティングチーム:顧客の声や市場のトレンドを踏まえた施策を設計する
- 営業チーム:アップセル・クロスセルの際に顧客が必要とする情報を適切に提供する
- 経営層:顧客維持や新機能開発の予算を積極的に確保し、NRR向上を全社目標として推進する
こうした連携がスムーズに行われることで、顧客が長期的に利用したいと思う魅力的なサービスを生み出す土壌が形成されます。
よくある疑問と対処法
ここでは、NRRを導入・改善する際に生じやすい疑問点を取り上げ、その対処法を紹介します。
- 新規顧客へのアプローチとのバランスは?
NRRを上げる施策に力を入れすぎると、新規顧客獲得が疎かになるケースがあります。しかし、企業成長には新規獲得と既存維持の両面が必要です。定期的にKPIをモニタリングし、投資配分を最適化することが重要です。 - NRRが低い場合はどうすればいい?
原因を特定するため、まずは解約理由のヒアリングやアンケート調査を徹底しましょう。オンボーディングプロセスに問題があるのか、製品に欠陥や物足りない部分があるのかなどを洗い出し、その結果をもとに優先度をつけて改善します。 - NRRが高いのに利益が伸び悩むケースは?
NRRが高くても、顧客単価が低すぎたり、コスト増によって利益が圧迫されている可能性があります。NRRだけでなく、ARR(年間経常収益)や利益率といった他の指標も合わせてモニタリングし、総合的に施策を検討する必要があります。
まとめ
ここまで、NRR(Net Revenue Retention)の基本的な意味や計算方法、ビジネスにおける重要性、そして改善施策を解説してきました。
NRRに課題がある場合、まずは解約理由の分析や顧客アンケートから取り組みましょう。
顧客の声を正面から受け止めることで、何が弱点になっているかが浮かび上がってきます。
その後、カスタマーサクセスの仕組みづくりや製品改善などの具体的な施策を進め、NRRの数値を定期的にモニタリングしていくことで、ビジネスが安定的に成長しやすい土台を整えられます。
NRR改善の具体的な方法や組織づくりについてさらに知りたい場合は、パキシーノ株式会社にお気軽にお問い合わせください。
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- NRRが100%を超えない場合、ビジネスは不安定なのでしょうか?
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一概に不安定と断定はできません。ただし、NRRが100%以下であるということは、解約やダウングレードにより既存顧客ベースの売上が減少傾向にある可能性を示唆します。特にサブスクリプション型ビジネスでは、安定収益の確保が重要なため、100%を下回っている場合は改善施策を検討すると良いでしょう。
- NRR改善のための具体的なコミュニケーション施策はありますか?
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代表的な施策として、顧客オンボーディングプロセスの最適化、定期的なウェビナーやカスタマーサクセスミーティングの開催、ユーザーフィードバックを反映した機能改善が挙げられます。また、顧客の利用実績に応じて特典や追加サポートを提供するロイヤリティプログラムを導入すると、解約率の低下とアップセル率の向上を同時に狙えます。