カスタマーサクセス組織の立ち上げ方法を順番に解説|組織の規模による違い・立ち上げ時の落とし穴と、その対策

目次

カスタマーサクセスとは?

カスタマーサクセスは、顧客自身が目指す成果を達成できるよう、自社の製品やサービスを通じて支援する戦略的な取り組みです。

単なる製品サポートを超えて、顧客の事業目標や課題を深く理解し、問題が起きる前に先回りしてサポートします。

カスタマーサクセスを通じて、継続的な取引関係を築き、企業を成長させていきます。

しかし、実際にカスタマーサクセスを立ち上げようとしても、具体的に何から始めればよいのでしょうか?

そこで、本記事ではカスタマーサクセス担当者の方、カスタマーサクセス組織の立ち上げに興味がある方に向けて、「カスタマーサクセス組織の立ち上げ方」を解説していきます。

「カスタマーサクセスの立ち上げ方法が分からない」方や、「カスタマーサクセスの組織がうまく機能していない」という方は、必見です!

カスタマーサクセスをお仕事としている方・これからやってみたいという方へ

カスタマーサクセス立ち上げのステップ

カスタマーサクセスを効果的に立ち上げるためには、以下のステップを踏んでいきましょう。

①カスタマーサクセスの目的を明確にする

カスタマーサクセスを導入する目的を明確にしましょう。

立ち上げる際に、カスタマーサクセスの存在意義を、組織全体で共有することが第一歩です。

具体的には、以下を順に決め、実行していきましょう。

ビジョンの設定

カスタマーサクセスを通じて実現したい長期的な目標を定義します。

例えば、以下のようなビジョンを設定しましょう。

  • 顧客の成功を通じて、業界No.1の顧客満足度を達成する
  • 顧客との長期的なパートナーシップを構築し、共に成長する企業文化を醸成する
  • 製品の価値を最大限に引き出し、顧客のビジネス成果に貢献する

具体的な目標設定

ビジョンを達成するための具体的な数値目標を設定します。

  • 顧客満足度(CSAT)を現在の75%から2年以内に90%に向上させる
  • 年間の解約率を現在の15%から5%以下に低減する
  • 既存顧客からの収益を毎年20%増加させる
  • ネットプロモータースコア(NPS)を+30から+50に改善する
  • オンボーディング完了率を現在の60%から90%に引き上げる

このように、具体的な目標を設定することで、カスタマーサクセスチームの活動の方向性が明確になり、進捗を測定しやすくなります。

また、目標達成に向けて組織全体が一丸となって取り組むことができます。

②組織のモデルを決定する

小規模組織の場合

スタートアップなど、小規模組織では顧客対応を役員から引き継ぐことがカスタマーサクセス業務のメインになっていきます。

小規模組織のカスタマーサクセス組織の特徴としては、以下の3つが挙げられます。

1. 役員主導の顧客対応

  •   初期段階では役員が直接顧客対応を行うことが多いです。
  •   顧客との関係が密接で、ニーズを直接把握しやすい傾向があります。

2. リソースの制約

  •   人員や予算が限られているため、効率的な運用が求められます。
  •    一人のスタッフが複数の※カスタマーサクセスの役割((CSM、オンボーディングスペシャリスト、テクニカルサポートなど)を担当することが一般的です。
  • カスタマーサクセス担当者が、他業務を行うこともあります。

3. 迅速な意思決定

  • 組織の規模が小さいため、顧客ニーズに迅速に対応できます。

小規模組織でのカスタマーサクセス立ち上げのポイント

  • スモールスタートを重視し、1〜2つの役割から始めることをお勧めします。
  • 顧客との直接的なコミュニケーションを活かし、深いニーズ理解を目指しましょう。
  • チームメンバーの強みを活かした柔軟な役割分担を行うことが効果的です。

中・大規模組織の場合

中・大規模組織では、カスタマーサクセスの業務を細分化して、それぞれが担当の役割を持つことが可能になります。

これらのカスタマーサクセス組織の特徴として、3つの特徴を解説します。

1. 専門化された部門構造

  • カスタマーサクセス専門の部門を設置することが多いです。
  • カスタマーサクセスの役割を明確に分担し、専門性を高めることができます。

2. 多様な顧客層への対応

  • 幅広い顧客層を抱えているため、セグメント別のアプローチが必要です。
  • 顧客の業種に関する知見も必要になる場合があるため、顧客対応の分担が必要性もあります。

3. 組織的な課題が生じる

  • 属人化を防ぐためのナレッジ共有が重要です。
  • 他部門との連携や情報共有の仕組みづくりが必要となります。

大規模組織でのカスタマーサクセス立ち上げのポイント

  • 役割(CSM、オンボーディングスペシャリスト、テクニカルサポートなど)を明確にし、業務効率化を図りましょう。
  • 顧客セグメンテーションによる効果的なアプローチを検討してください。
  • ナレッジ管理システムの導入による情報共有の効率化を図りましょう。

③カスタマーサクセス組織内の役割を設定する

カスタマーサクセスチーム内の各役割を明確に定義することで、効率的なカスタマー組織を運営します。

役割は以下の通りです。

1. カスタマーサクセスマネージャー(CSM)

カスタマーサクセスマネージャーは、カスタマーサクセス部門の責任者です。

カスタマーサクセス組織の運営を統括します。

四半期ごとに戦略レビューを実施して、顧客の目標達成を支援します。

2. オンボーディングスペシャリスト

新規顧客の初期設定とトレーニングを担当し、スムーズに、製品を導入してもらえるように支援します。

特に複雑なソフトウェアなどを製品として扱っている場合、顧客が製品を扱いきれず、離脱してしまう可能性があります。

そのため、オンボーディングを実施することは大切です。

3. テクニカルサポート

テクニカルサポートは、技術的な問題解決を担当し、顧客の製品利用をサポートする役割です。

顧客からの技術的な問い合わせに対応し、迅速な問題解決を図ります。

4.CS Ops(カスタマーサクセスオペレーション)

CS OpsはCS部門の成果を最大化するために、業務プロセスの最適化を行います。

また、データ分析・顧客とのタッチポイントの改善など幅広い業務を担います。

このように、カスタマーサクセス役割を適切に配置し、連携させましょう。

各役割の設定と、適切な人材の配置が、カスタマーサクセス戦略の成功には不可欠です。

④KPIを設定する

具体的に設定した目標を達成し、カスタマーサクセスの成功を視覚化するために、主要業績評価指標(KPI)を設定しましょう。

代表的なKPIには以下のようなものがあります。

  • 顧客満足度(CS)
    顧客の全体的な満足度を測定します。製品やサービスに対する顧客の評価を数値化します。
  • ネットプロモータースコア(NPS)
    顧客のロイヤリティを測定します。顧客が他者に製品やサービスを推奨する可能性を数値化します。
  • 解約率
    一定期間内に解約した顧客の割合を測定します。顧客維持の状況を把握するための重要な指標です。
  • アップセル/クロスセル率
    既存顧客への追加サービスの導入率を測定します。顧客との関係深化と収益拡大の指標となります。
  • ヘルススコア
    顧客の製品利用状況などから、数値化します。複数の指標を組み合わせて総合的に評価します。

これらのKPIの目標値を設定し、定期的に測定することで、カスタマーサクセス活動の効果を評価し、必要に応じて戦略を調整することができます。

⑤顧客の管理方法を決める

効率的な顧客情報管理システムを構築します。

1. CRMシステムを導入する

企業規模や業種、予算に応じて、Salesforce、HubSpot、Microsoft Dynamics 365などの主要CRMから適切なCRMツールを選定します。

そして、顧客情報フィールド、商談プロセス、レポート機能などを調整し、選定したCRMを自社のニーズに合わせてカスタマイズし、顧客情報を移行します。

従業員がCRMを効果的に使用できるよう、トレーニングすることが大切です。

2. データ収集プロセスの確立

自動データ収集ツールの導入し、顧客とのやり取りを自動的に記録します。

ウェブサイトのトラッキング、メールマーケティングツール、顧客サポートシステムなどと連携し、製品やサービスの利用状況を自動的にCRMに取り込む仕組みを構築します。

これにより、顧客の行動パターンや嗜好を把握できます。

また、顧客に対して、顧客満足度調査やNPS(Net Promoter Score)の測定を定期的に実施し、その結果をCRMに統合します。

フィードバック収集の仕組み作りを行うことは非常に重要です。

3. データセキュリティの確保

顧客データの取り扱いに関する明確なガイドラインを作成し、全従業員に周知しましょう。

セキュリティ意識向上トレーニングを実施し、最新の脅威や対策について教育することも大切です。

また、アクセス権限の管理やデータ暗号化を行い、顧客情報が流出しないように注意しましょう。

データ漏洩などのセキュリティインシデントに備え、インシデント対応の計画も立てておくことも大切です。

これらの方法を適切に実施することで、効率的で安全な顧客管理システムを構築し、カスタマーサクセスの基盤を強化することができます。

⑥人材を確保・育成していく

適切な人材を採用・アサインし、継続的な育成を行います。

また、カスタマーサクセスチームの従業員エンゲージメントを高める工夫もあるとよいでしょう。

人材の確保

採用基準の設定は、適切な人材を見つけるための重要なステップです。

カスタマーサクセスの役割に必要なスキルや資質を明確にし、具体的な評価基準を設定します。

人材の育成

人材を、継続的に育成し続けることが重要です。

効果的なトレーニングプログラムを開発し、実施しましょう。

新入社員向けプログラム

例えば、2週間の集中研修を実施し、以下の内容をカバーします。

  • 会社の理念とカスタマーサクセスの重要性
  • 製品・サービスの詳細な知識
  • 顧客対応スキル(コミュニケーション、問題解決など)
  • 社内システムやツールの使用方法

既存社員向けプログラム

例えば、月1回のスキルアップセッションを実施し、以下のような内容を扱います。

  • 最新の業界動向や技術トレンド
  • 成功事例の共有と分析
  • 高度なコミュニケーションスキルの習得
  • リーダーシップ開発

従業員エンゲージメントを高める施策

キャリアパスの設定

明確なキャリアパスを提示することで、社員の長期的な成長とモチベーション維持を支援します。

例えば、以下のようなキャリアパス設定し、昇進に必要なスキルと経験を明確にしましょう。

  • ジュニアCSM:入社1-2年目、基本的な顧客対応を担当
  • シニアCSM:2-4年目、複雑な案件や主要顧客を担当
  • チームリーダー:4-6年目、小規模なチームを率いる
  • 部門マネージャー:6年目以降、カスタマーサクセス部門全体の戦略立案と管理を担当

成果に基づく報酬制度
顧客満足度やアップセル成功率などの指標に基づくボーナス制度を導入し、成果を適切に評価・還元します。

表彰制度の実施
四半期ごとのベストパフォーマー表彰など、優秀な社員を公に認める機会を設けます。

スキル認定制度の導入
特定のスキルや知識を習得した社員を公式に認定し、専門性を評価します。

柔軟な勤務体制の整備
フレックスタイム制度などを導入し、ワークライフバランスの向上を支援します。

1on1ミーティングの定期開催
上司との密なコミュニケーションを通じて、課題解決と成長支援を行います。

このような施策を組み合わせることで、優秀な人材を確保・育成し、社員の成長意欲を刺激して組織へのエンゲージメントを高めることができます。

また、個人の得意不得意に応じて、役割を分担(アサイン)することも大切です。

⑦他部署との連携体制を構築する

カスタマーサクセスを効果的に推進するためには、部門間の壁を取り払い、顧客中心の組織文化を醸成することが大切です。

この章では、他部署との連携体制を構築するための具体的な施策を紹介します。

定期的な部門間ミーティングの実施

週1回の朝会などを設け、各部門の最新情報を共有します。

このような機会を通して、部門間の相互理解が深まり、協力体制が強化されます。

例えば、営業部門の新規獲得情報や、製品開発部門の最新アップデート情報などを共有することで、カスタマーサクセス部門が先手を打って対応できるようになります。

共通目標の設定

「顧客継続率95%以上」など、全部門で共有できる顧客中心の目標を設定します。

共通の目標があることで、部門を超えた協力が生まれやすくなります。

また、この目標に向けて各部門がどのように貢献できるかを議論することで、より深い連携が可能になります。

情報共有プラットフォームの構築

Slackなどのコミュニケーションツールを活用し、リアルタイムで顧客情報を共有できる環境を整備します。

顧客に関する重要な情報がタイムリーに全部門に伝わることで、迅速な対応ができるはずです。

また、部門を超えた自由な意見交換の場としても活用できます。

クロスファンクショナルチームの結成

特定のプロジェクトや課題に対して、異なる部門のメンバーで構成されるチームを結成することも、連携体制を構築するうえで必要です。

多角的な視点で問題解決にあたり、部門間の相互理解も深まります。

ここまで紹介した、カスタマーサクセス組織の立ち上げステップを着実に実行することで、効果的なカスタマーサクセス体制を構築できます。

カスタマーサクセス立ち上げの落とし穴5選とその対策

カスタマーサクセスを効果的に立ち上げるには、よくある失敗パターンを理解し、適切な対策を講じることが重要です。

ここでは、主な落とし穴と、それを回避するための具体的な施策を紹介します。

1⃣ 情報連携の不足

  • セールスから顧客情報が適切に引き継がれず、顧客の背景や期待値が不明確なまま対応を始めてしまう。
  • 結果として、的外れなサポートを提供し、顧客満足度の低下につながる。

対策

1. セールスとカスタマーサクセス部門の定期的な情報共有会議を実施する。

2. CRMツールを活用して、顧客情報を一元管理する。

3. 商談段階から顧客の課題や目標を明確に記録し、引き継ぐプロセスを確立する。

2⃣ 顧客ニーズの深掘り不足

  • 表面的な要望にのみ対応し、顧客の本質的な課題解決ができない。
  • 製品機能の説明に終始し、顧客のビジネス成果向上につながる提案ができない。

対策

1. カスタマージャーニーを作成したり、ペルソナ分析を行い、顧客の行動パターンや動機を深く理解する。

2. 定期的に主要顧客へのインタビューを行う。

3. 顧客の利用データを分析し、行動パターンや成功要因を特定するトレーニングを行う。

3⃣ オンボーディング後のフォローアップ不足

  • 初期設定後のフォローアップが不十分で、顧客の製品利用が停滞する。
  • 導入直後は頻繁に連絡するが、その後のコミュニケーションが途絶える。

対策

1. 顧客のライフサイクルに応じたフォローアッププランを策定する。

2. 利用状況モニタリングの自動化ツールを導入し、利用停滞の兆候を早期に検知する。

3. 定期的なチェックインミーティングを実施し、顧客の課題や成功事例を継続的に把握する。

4⃣ スケールアップ時の課題

  • チーム拡大に伴い、サポート品質にばらつきが生じる。
  • ナレッジの属人化により、効率的な顧客対応ができない。

対策

1. オンボーディングや定期フォローのプロセスを文_し、標準化する。

2. FAQやベストプラクティスを集約したナレッジ管理システムを構築する。

3. スキルマトリクスを作成し、計画的な教育プログラムを実施する。

5⃣ 部門間連携の不足

  • カスタマーサクセス部門が孤立し、他部門との情報共有が不十分になる。
  • 顧客の声が製品開発やマーケティングに適切にフィードバックされない。

対策

1. 部門横断的な定期ミーティングを設定し、情報共有を促進する。

2. 「顧客継続率95%以上」など、全部門で共有できる顧客中心の目標を設定する。

3. Slackなどのツールを活用し、リアルタイムで顧客情報を共有できる環境を整備する。

対策することで、カスタマーサクセスチームの立ち上げやスケールアップを成功できます。

常に顧客中心の視点を持ち、継続的な改善を心がけることが、長期的な成功につながります。

まとめ

本記事では、カスタマーサクセスの立ち上げ方法を解説しました。

カスタマーサクセスを立ち上げるには、ノウハウが必要です。

パキシーノでは、顧客体験に関するコンサルティングを行っており、カスタマーサクセス立ち上げの伴走支援も行っております。

ご興味のある方はお気軽にお問い合わせください。

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カスタマーサクセスとカスタマーサポートの主な違いは何ですか?

カスタマーサクセスは、顧客が製品やサービスを通じて目標を達成できるよう、先回りして支援する役割です。例えば、顧客が自社製品を快適に利用できるようサポートしたり、利用状況を分析して改善提案を行ったりします。

一方、カスタマーサポートは、顧客からの問い合わせや要望に対応する役割です。主に、製品の使い方や技術的な問題解決など、顧客が直面している課題に対処します。

つまり、カスタマーサクセスは能動的、カスタマーサポートは受動的なアプローチと言えます。

カスタマーサクセスの導入に失敗するとどのような影響がありますか?

カスタマーサクセスの導入に失敗すると、以下のような影響があります。

1. 顧客満足度の低下:顧客のニーズに適切に応えられず、不満が増加する可能性があります。
2. 解約率の上昇:顧客が期待する価値を提供できず、他社への乗り換えが増える恐れがあります。
3. 社内リソースの無駄遣い:人員や予算を投入したにも関わらず、期待した成果が得られない状況に陥ります。
4. 社内モチベーションの低下:失敗により、従業員の意欲が低下する可能性があります。

一方で、失敗は貴重な学びの機会にもなります。

例えば、「顧客ニーズを満たせなかったのか」「どのようなプロセスに問題があったのか」を分析することで、より効果的なカスタマーサクセス体制を再構築できます。

継続的な改善を心がけることが、長期的な成功につながります。

監修者

今関 栞
航空会社でキャリアをスタート。これまで約7年、スタートアップ/ベンチャー企業にて、主にCS、及び業務プロセス改善に従事。 CS部門の立ち上げ/運用/改善、チャーンレートの改善やチャーン阻止など実務〜マネジメントを経験。 また、SQLを用いたデータ取得/分析/提案、CRM構築などテクニカルな分野も得意領域。 これまでの担当企業数は数百社にわたる。

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