カスタマーサクセスの業務プロセスを具体的に解説!

目次

カスタマーサクセスとは

カスタマーサクセス(CS)とは、顧客が自社の商品やサービスから最大限の価値を得られるようサポートする活動のです。

顧客が自社製品を上手に活用し、満足できるように支援します。

そして、顧客が長く自社製品・サービスを利用することを目的とします。

しかし、「カスタマーサクセス」という言葉を聞くことが多くても、どのような業務プロセスかを知らない方も多いのではないでしょうか?

そこで、本記事では、カスタマーサクセスの役割を説明したうえで、具体的なカスタマーサクセスの業務プロセスを詳しく解説していきます。

最後まで読めば、カスタマーサクセスの業務プロセスを理解できるはずです。

カスタマーサクセスをお仕事としている方・これからやってみたいという方へ

カスタマーサクセスの役割

セールスやマーケティングが主に新規顧客の獲得を目指すのに対し、カスタマーサクセスは既存顧客が自社の製品やサービスを長く利用するようサポートするのが役割です。

具体的に、カスタマーサクセスには、以下の3つの主要な役割があります。

カスタマーサクセスの役割3つを、わかりやすく視覚的に表した図

LTV(顧客生涯価値)を最大にする

カスタマーサクセスは、顧客が製品やサービスを効果的に利用し、ビジネス上の成果を上げるためのサポートを提供します。

これにより、顧客の満足度が向上し、企業との信頼関係が深まります。

顧客離れを防止する

顧客が離れていくことを防ぐために、定期的にコミュニケーションを行います。

顧客が問題を抱える場合には、親身に相談に乗り、解決策を提示することで、継続的な利用を促進します。

収益を拡大する

カスタマーサクセスは、既存の顧客に新しい機能や上位プランを提案することで、収益の拡大を図ります。

顧客にあったプランを、顧客が価値を見出せるように提案することで、アップセルやクロスセルの機会を作り出します。

カスタマーサクセスを効果的に活用することで、顧客の成功体験を提供し、企業全体の成長を促進することが可能となります。

カスタマーサクセスのプロセス

前章ではカスタマーサクセスの役割を説明しました。

本章では、具体的なカスタマーサクセスの業務プロセスを詳しく解説していきます。

カスタマーサクセスを効果的に実現するためには、プロセス全体を理解し、段階的に進めていくことが重要です。

顧客層の整理

カスタマーサクセスを実行する第一歩は、顧客層の整理です。

同じ製品を利用している顧客でも、業種や企業規模、利用目的、さらには製品に求める価値が異なる場合があります。

そのため、全ての顧客に同じ対応を行うのではなく、それぞれのニーズに合わせたアプローチが必要です。

顧客を整理する(セグメント化する)ためには、いくつかの方法があります。

たとえば、以下のような基準に基づいて顧客を分類することが考えられます。

  • 企業規模: 小規模、中規模、大規模企業に分けて、それぞれの特性やニーズに応じたサポートを提供します。
  • 利用目的: 「顧客が製品をどのように利用しているのか」に注目し、それに応じた適切な価値を提供します。たとえば、製品を業務の効率化のために使う顧客もいれば、ビジネスチャンスを開拓するために利用する顧客もいるかもしれません。
  • 利用頻度: 製品やサービスをどのくらい頻繁に利用しているかで顧客を分類します。頻繁に使う顧客には継続的なサポートや新機能の提案が必要な場合があります。一方で、利用が少ない顧客には利用促進のためのアプローチが重要です。
  • 支払いプラン: 無料ユーザー、スタンダードプラン、プレミアムプランといった顧客の支払いプランによってもサポートの内容が異なります。高額なプランを利用している顧客には、よりパーソナライズされたサポートが求められます。

このように顧客を分類し、それぞれのセグメントに対して適した価値を提供することで、カスタマーサクセスを効率的に実施することが可能になります。

カスタマージャーニーを作成

カスタマージャーニーとは、顧客が製品を購入・利用・継続・再購入するまでの道のりです。

顧客層を整理したうえで、それぞれの顧客層が製品やサービスを利用するプロセスを可視化します。

「顧客に自社の製品やサービスをどのように体験し、成功を感じてもらうか」を明らかにするための必要なツールです。

カスタマージャーニーを整理し、顧客の体験を可視化することで、顧客が各フェーズでどのようなサポートを必要としているかを把握し、適切な対応を行うことができます。

カスタマーサクセス範囲内のカスタマージャーニーは、主に以下の4つのフェーズに分けるとよいでしょう。

カスタマージャーニーの4つのフェーズを、わかりやすく視覚的に表した図

①オンボーディング

オンボーディングとは、顧客が製品やサービスを初めて利用し始める段階です。顧客が製品やサービスを効果的に使うためのサポートを行い、顧客が製品やサービスが使えるように支援します。

オンボーディングをは、顧客がその後のフェーズで製品を効果的に使いこなし、価値を実感するための基盤であり、非常に重要です。

オンボーディングを適切に行わなかった場合、顧客が製品やサービスの効果を実感できず、再購入しなくなってしまいます。

具体的な施策としては、ウェルカムメールの送信、製品の使い方を説明するガイドやチュートリアルの提供、初期設定のサポートなどが考えられます。

さらに、オンボーディングセミナーやトレーニングセッションを実施することで、顧客が製品を迅速に理解し、利用を開始できるように支援します。

②アダプション(定着化)  

オンボーディングが完了した後、顧客は日常的に製品を使い始めます。

この段階では、顧客が製品を効果的に利用し、自分の業務や課題の解決に役立てられているかが重要です。  

ここでのサポートは、より複雑な機能の利用を促進したり、具体的な製品・サービスの業務への役立て方を提案したりすることが中心になります。

他にも、使用方法に関して追加でトレーニングを行ったり、アドバイスを提供することで、顧客が製品の価値を理解し、ビジネス上で成果を最大化できるようにします。

③リテンション(継続利用)  

継続利用のフェーズでは、顧客が製品を長期間にわたり利用し続ける顧客の状況を把握しましょう。

顧客が製品を長期間にわたり利用し続けるための対策が必要です。

製品の価値が顧客に理解されている場合に、顧客は製品やサービスを使い続けます。したがって、定期的なフォローアップを行い、継続して価値を提供することが必要です。

定期的なチェックインやフィードバック収集をすることで、顧客が直面している課題を速く察知し、迅速に解決することできます。

また、製品やサービスに新しい機能が追加された際には、顧客に知らせ、利用を促進することもリテンション向上に効果的です。

④アップセル・クロスセル

顧客が製品やサービスに満足できるようにサポートしたうえで、この段階では顧客に対して上位プランや追加機能の提案を行います。

ただし、アップセルやクロスセルの提案は、顧客が製品の基本的な価値を理解し、十分に活用していることが前提となります。

顧客の利用状況やニーズを理解したうえで、最適なタイミングで提案を行うことで、顧客の満足度を高めつつ、自社の売上も向上させることが可能です。

カスタマージャーニーに基づいたフローを作成

カスタマージャーニーの4つのフェーズで行うフローを、わかりやすく視覚的に表した図

カスタマージャーニーが完成したら、具体的なフローを作成します。フローとは、各フェーズにおける具体的なアクションの流れを示すものです。

顧客とのタッチポイントやコミュニケーションのタイミングの目安を設定することで、効率的で効果的なサポートを行うことができます。

オンボーディング

たとえば、オンボーディングフェーズでは以下のようなステップが考えられます。

  • 製品のアカウント作成
  • 初期設定サポート
  • 初回利用ガイドの提供
  • 定期フォローアップメールの送信

アダプション

アダプションでは、顧客が製品やサービスを日常的に使用し、その価値を実感できるようサポートできるような、以下の行動をするとよいでしょう。

  • 利用状況のモニタリング
  • 機能活用のためのヒント提供
  • ウェビナーや活用事例の紹介
  • カスタマーサクセスマネージャー(CRM)による定期的なチェックイン

リテンション

リテンションでは、顧客との長期的な関係を維持し、継続的な利用を促進します。具体例は以下の通りです。

  • 定期的な満足度調査の実施
  • 新機能や更新情報の案内
  • ロイヤルティプログラムの提供
  • カスタマーコミュニティの構築と運営

アップセル・クロスセル

アップセルクロスセルでは、顧客のニーズに合わせて追加サービスや上位プランを提案します。以下のようなフローを設定するとよいでしょう。

  • 利用状況に基づいた個別提案の作成
  • 上位プランのメリット説明
  • 無料トライアルの提供
  • 成功事例を用いた価値提案

このように、カスタマージャーニーの各フェーズに応じて具体的なアクションを設定することで、顧客の成功を効果的にサポートすることができます。

施策の実行

フローに基づいて具体的な施策を実行します。

施策の実行においては、顧客とのコミュニケーションが非常に重要です。

顧客の反応やフィードバックを受けながら、サポート内容を柔軟に調整し、顧客が最大限の価値を引き出せるようにサポートします。

改善

カスタマーサクセスのプロセスは、継続的に改善していくことが必要です。

顧客からのフィードバックや利用データを分析して、施策の効果を評価します。結果に基づいてプロセスを改善していくことが大切です。

具体的には、以下のように、改善するための活動を行いましょう。

  • データ分析: 顧客の利用状況や満足度調査の結果を定期的に分析し、トレンドや課題を把握します。
  • ベストプラクティスの共有: 成功事例を社内で共有し、他の顧客にも適用できる方法を検討します。
  • チーム育成: カスタマーサクセスチームのスキルアップを図り、より高度な支援ができるよう教育プログラムを実施します。

このようなプロセスを通して、カスタマーサクセスの質を高め、顧客満足度を向上させ、顧客と長期的な関係を構築できます。

カスタマーサクセス担当者は、作成したフローを基に日々の業務を進め、改善の余地がないか振り返りながら、より効果的なサポート体制の構築を目指します。

カスタマーサクセス実行のコツ

この章では、カスタマーサクセスを成功させるための具体的なコツとして、KPIの活用とデータの活用について詳しく解説します。

KPIの活用:顧客の成功を数値で可視化し、改善を加速する 

KPI(重要業績評価指標)は、目標達成度を測るための指標です。

KPIを追うことで、カスタマーサクセスの改善点を見つけたり、施策の効果を評価したり

カスタマーサクセスにおいて、以下のKPIを用います。

  • 契約更新率: 顧客が契約を継続する割合を示し、サービスに対する満足度や顧客ロイヤリティの高さを測る指標です。
  • チャーンレート(解約率): 顧客が契約を解約する割合を示し、サービスに対する不満や競合他社への乗り換えリスクを把握する上で重要な指標です。
  • 顧客満足度: 顧客がどれだけサービスに満足しているかを数値化し、サービス品質の向上に役立てます。
  • アップセル・クロスセル率: 既存顧客への追加販売や関連商品の販売が成功した割合を示し、顧客との関係を深めることで収益向上に貢献します。

これらのKPIを定期的に測定し、目標とのギャップを分析することで、カスタマーサクセスの活動がどれだけ効果的かを評価できます。

また、KPIはカスタマーサクセスの目標設定や施策の優先順位を決める上でも役立ちます。

データの活用:顧客一人ひとりに合わせた最適なサポートを提供する

データは顧客の行動やニーズを理解するために、有益な情報源です。

顧客が製品やサービスを「どのように利用しているのか」「どのような課題を抱えているのか」をデータ分析によって可視化することで、最適なサポートを提供できます。

例えば、顧客が特定の機能を頻繁に利用している場合、その機能に関する情報を提供したり、新しい機能のリリース時に優先的に案内したりすることで、顧客満足度向上に繋げることができます。

また、特定の問題に対して、多くの顧客がサポートに頻繁に問い合わせている場合、内容を分析し、FAQの充実やマニュアルの改善など、顧客の疑問を解消するための施策を検討する必要があります。

データの活用によって、以下のような効果が期待できます。

  • 顧客の課題の早期発見: 顧客が抱える問題を事前に察知し、迅速に対応することで、顧客の離脱を防ぎます。
  • 1人1人に合わせたサポート: 顧客の利用状況や属性に基づいた、きめ細やかなサポートを提供することで、顧客満足度を高めます。
  • 効果的な施策の立案: データに基づいた仮説検証を繰り返すことで、効果的な施策を立案し、カスタマーサクセスの成果を最大化します。

データ分析には、顧客行動履歴データ、アンケートデータ、サポート履歴データなど、様々なデータが活用されます。

これらのデータを統合し、可視化することで、顧客の全体像を把握し、より深い洞察を得ることができます。

まとめ

カスタマーサクセスは、企業が顧客と長期的な関係を築き、ビジネスの成長を促進するための重要なプロセスです。

顧客の成功を支援することで、企業の収益も向上し、競争力を高めることができます。

本記事を貴社の成長に役立てていただければ幸いです。

パキシーノ株式会社は顧客体験やカスタマーサクセスに関するコンサルティングを行っています。

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監修者

今関 栞
航空会社でキャリアをスタート。これまで約7年、スタートアップ/ベンチャー企業にて、主にCS、及び業務プロセス改善に従事。 CS部門の立ち上げ/運用/改善、チャーンレートの改善やチャーン阻止など実務〜マネジメントを経験。 また、SQLを用いたデータ取得/分析/提案、CRM構築などテクニカルな分野も得意領域。 これまでの担当企業数は数百社にわたる。

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